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2010年5月、小さな会社のブランド戦略を手がける、スターブランド社の村尾隆介さんと、スイスイ社松岡宏行の対談が実現しました。青山ブックセンターでの村尾隆介さんブックフェアで、タイツくんの「男のたしなみ」を紹介いただいたのがご縁。
「働き方」や「ブランド」への考え方、そして「自分ブランド」づくりに至るまで、じっくりとお話しさせていただきました。 村尾さんの、キャッチーなフレーズと共に繰り広げられるブランド論や、松岡の仕事観など、生き方、働き方にヒントとなるお話が盛りだくさんです。


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村尾隆介

小さな会社のブランド戦略を手掛けるコンサルタント。スターブランド社の共同経営者・フロントマンとして全国をプロジェクトで飛びまわる。 弱冠14歳で単身渡米。ネバダ州立大学教養学部政治学科を卒業後、本田技研に入社。同社汎用事業本部で中近東・北アフリカのマーケティング・営業業務に携わる。退社後、食品の輸入販売ビジネスで起業。事業売却を経て現職。その成功ノウハウを、小さな会社やお店に提供している。 「拡大志向ではなく、しあわせ志向の起業術」「パーソナルブランドの大切さ」などのメッセージを説く講演会・セミナーは年間50本を超える。 著書に『小さな会社のブランド戦略』など。
<公式サイト>http://www.ryumurao.com


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松岡宏行

キャラクターコンテンツ制作等を手掛けるスイスイ社代表取締役。 北海道大学卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。外国為替に従事し、エリート人生を邁進すると思われたが、アッサリ退社。数年の冬眠生活ののち、1993年スイスイ社を設立。代表作に「タイツくん」(コピー担当)。 現在、「日経ビジネスアソシエ」「GOETHE」でタイツくん連載中。 著書「哀愁のジャパニーズドリーム」(大和書房)は、冬眠生活から起き出してスイスイ社を立ち上げ、タイツくん誕生までを書いた起業ストーリー。



〜2010年5月 スターブランド社にて対談〜

松岡 先日は「男のたしなみ」をビジネス書としてご推薦くださってありがとうございました。あの本は、サブカルの棚に置かれちゃうんですが。
村尾

ビジネス書ですよね、これは。もう、こうやって付箋つけて、人にも見せて勧めてるんですけど…

普通のビジネス書30冊読むより、この本(男のたしなみ)を30回読んだ方がいいと思いますね。

松岡 今の、録音できてる?(笑)村尾さんの、この間のイベント(青山ブックセンターのフェア)が面白く、驚いたのが2つほどありまして、一つは、村尾さんの客層がいい。美人ばっかじゃないですか。あれが羨ましいというのが一つ。
村尾 (笑)

「気軽に相談できる兄ちゃん」のコンサルティング

松岡 もう一つが、村尾さんの格好にびっくりして。自分ブランドは洋服で自分をイメージづけることも大切って(著書に)書いてあるから、どれだけのオシャレして来るのかと思ったら、ビーサン穿いて、裏の浜でサーフィンするような、そういう出で立ちでいらっしゃって。
すごく、こうズコっときまして。あれは一体どういうブランディングだったんですか。

小さな会社のブランド戦略
〜「生き方」と「働き方」が一致するビジネスモデル〜
村尾 どうしても「コンサルタント」というと、世間一般のイメージだとピンストライプで、しっかりスーツを着ていて、ネクタイも太いのが…っていう非常に自信ありげなイメージを持たれている方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、僕は普段から小さな会社や小さなお店相手で仕事させていただいていることが多いんです。
で、そういう方にとって「コンサルティング」とか「ビジネス戦略」は非常に縁遠い世界だったし、当然のことながら、初めてコンサルタントと仕事する方が多いんですね。
そういう方が「エラそうな奴が来た」って思うんではなく、「気軽に何でも相談できる兄ちゃん」っていう風に普段から思っていただければなあと。
松岡 ではあのときだけじゃなくて、これが「スタイル」なんですか?
村尾 そうですね。
松岡 これでいつもいらっしゃるんですか。
村尾 大抵の場合はそうです。
松岡 でも、御社のクライアントはね、たぶん「コンサルタントの人が来るよ」と。「教えてもらおう!」と自分より高い識見に金を払うと思っているじゃないですか。それで、なんか友達みたいな人が来たらガッカリされる面はないんですか?
村尾 むしろ低いですもんね(笑)。
松岡 安心する部分と、なんだよ、友達とダベってるのと同じじゃんということになりかねませんか?
村尾 僕は、やっぱり経営者の方だけがビジネス戦略とかブランディングを理解しててもダメだと思うんです。やっぱり、スタッフもその自社の「らしさ」を100%理解していって、普段も会社の表現者として、今この時間も活躍していないとダメじゃないですか。で、僕は現場に行くときは、経営者よりもスタッフの方となるべく交流したり、仕事以外でもご飯一緒に食べたりして、ブランドを作るとかそういうことじゃなくて、良い会社をせっかくだから作ろうよ、と。
そういう風な役回りをすることが多かったりするんです、普段から。その時も、皆で居酒屋に行くときも、ヘンにスーツで堅く…というよりは自分が率先して地べたに座るくらいの…そんな勢いってのを普段から大切にしていますね。
松岡 じゃ、段の上から立ってしゃべらない、と。同じ目線か、むしろ下側でいいやと、そういう感覚なんですね。
村尾 そうですね。なので、難しい言葉を使わないとか。
松岡 それだとね、話は解りやすいし、共感もされやすいですよ。でも村尾さんの言葉に金を払う価値があるかどうか。お布施ってのはだいたい高いところに置くもので、低いところに投げ与えるのは、ジャラ銭感覚じゃないですか。そのスタンスと、そのお金もらう立場ってのはうまくかみ合うものなんですか。
村尾 スタッフの方は直接僕にお金を払ってくださる形式ではないじゃないですか。通常は経営者の方が判断して「この人を呼ぼう」ってなってきますから、経営者が僕の格好を見てどう判断するかってところが重要だと思うんですが、多くのケースで僕のことを知る、最初のきっかけが講演会だったりします。で、僕は講演会のときも、ここまでヒドくはないですけれど、こういう格好が多かったりするんです。
松岡 今日は、Tシャツにジーンズに、テンガロン?素材がちょっと面白いね。
村尾 今日なんてね、もうフォーマルな感じで。
松岡 ネクタイもしてるし(笑)(チョーカーを指して)
村尾 ふだんは短パン(笑)。今日はかろうじて革靴も履いてるってことで。講演会とかも、よっぽど真面目なところじゃない限り、こんな感じだったりするんです。で、それを見て、全部含めて「この人に任せたい」って思ってくれる人が経営者にもいらっしゃっるので、もう「ああいうのは、ビジネスの姿勢として違うよね」って言う方とはそこで終わりになりますよね。
松岡 そうすうると、経営者の人って意外とオープンマインドの人が多いから、これを自分の会社の人にも広めてほしいっていうニーズがあるんですね、最初から。
村尾 そうですね。そこが、ある意味…ちょっと語弊のある言い方かもしれませんけど、試験みたいにもなっていると思うんです。だって、そういうところも受け入れられる素直さとかオープンさがないと、僕が入っていったって会社が変わるわけないんですよ、絶対に。そこで、けしからん!となったらダメですよね。
松岡 そうすると、村尾さんも実はお客を選んでて。意見を聞いてくださるような、オープンマインドかどうか。そこで実は選別してるんですね。それが、ここに書いてる村尾ブランドなんだな。書いてありましたね、自分が来て欲しいお客さんに来てもらえるのもブランドの一つの条件みたいなことが。
村尾 そうですね。まさしくそうだと思います。ブランディングってある意味…、言葉には書いてないけど「こういうお客様欲しいから」ってのを店全体とか、もしくは会社の印刷物とかHP、社員の姿勢とか空気とか、そういうところで全体でメッセージとして伝えていくってのが一つの側面としてあるじゃないですか。
そこの送信と受信がぴたりとハマるから、自分たちの求めてるお客様と、相思相愛の関係が出来てくるんで、自ずと僕はこういう格好や態度でいるんでしょうね。
松岡 ふーんナルホドね。僕も、実は間口の狭い会社でして、誰にでも好かれるタイプじゃないものですから…10人中2人くらいかな。あいつでもイイって言ってくれるの。あとは、何だアイツ、というのが6割くらいかな。間口ほそーいんですよ。その狭い中で、あの人面白いねって言ってくれる人って、好きになってくれて強力なエンジン持ってる人が多いんで、お陰で面白い仕事が出来るっていう、そんな感じだったんですね。
ただし、悩ましいのは、組織とか人数がいっぱいいる中で、シャープな人とか、受け入れられる感度の高い人、理解力のある人が、ポンと経営者とかナンバー2にいて、「松岡面白いから呼んできて取り入れてやろう」ってなっても、全員が全員そうじゃないんで、その後が苦しいんですよ。村尾さんのことを分かってくれる人って、経営者はオープンマインドでやってる人が多い、だから経営してると思うんですけど、その人達を支えている人達って意外とカッチンカッチンだったり、社長の言うこと全部聞かなきゃと思ったりして、教条主義だったりする人、いっぱいいますよね。
その人達の心を溶かす秘訣は、どうやってらっしゃるんですか?
村尾 事前にまず、僕も経営者に話してですね。ちゃんと「こういう人が来る」っていうのを伝えておいてくれ、と。でも、社長でもトークの上手な人、初めから社員と絆が出来ている人、そうじゃない人と色々いるから。千差万別じゃないですか。なので、まずは全員本を読んでくださいって事で、何かしらの本を一冊、共通のものを読んでいただくって事は必ずやっています。
あと、あまりにも会社が大きいときには中々できないんですけど、僕からスタッフに事前にお手紙を送ったり。もしくはその会社に行く初日に「こういう風に会社を変えていきたいと思うんで」とお手紙を一人一通書いて。なるべく一人一通。言葉を交わして…。
松岡 一人一通!?
村尾 一人一通。内容は同じだけれど、一人一通、そこのフロアに行って、挨拶をして…。
松岡 基本は小さい会社でやろうとしているから、何千人もいないわけですね。
村尾 そうです。
松岡 まあ、何十人か百人くらいか。
村尾 MAXでも数百人くらい。
松岡 そうすると一人ずつに手渡せるんだ。
村尾 うん、1日で、だいたい。もちろん、営業でその日たまたま外出でいない方もいますけれど。
松岡 「こういう方針、こういうやり方でやりますので仲良くしてね」みたいな、個人的なメッセージ交換になるわけですか。
村尾 そうですね。そのときに個人のメールアドレスとかも差し上げて、スタッフの方も自由になるべくアクセスできるようにっていう風にはしてます。
松岡 その手紙ってのは、じゃあ、「拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」じゃなくて。

 ブランディング=イイ会社つくろうぜ!

村尾 (笑)。結局「ブランド」っていう言葉の定義自体がものすごく、幅が広かったりするんで、「ブランディングの人来るよ」とか、「うちブランド目指すらしいよ」って言った時も、皆、捉え方ぜんぜん違う訳じゃないですか。なので、僕が必ず共通して心がけていることは、「ブランド、ブランドってもしかしたら御社の社長は言ってるかもしれないけど、単純に、皆でイイ会社作ろうぜってことだから」って。
松岡 なるほどね。
村尾 だってそこで僕の講演とかセミナーとか聞いて、次の日朝礼で「うちもブランド目指すぞ!」って言う社長さんもいるんですよ。でも、ある社員はブランド=値段の高いことだと思ってる。
松岡 ルイ・ヴィトンだと思ってるから。
村尾 そうそう!値上げ宣言だと思って、「えー値上げすんですかー」って話になったりとか。
松岡 「社長なに言ってるんすか」と。「うちそんな高級な会社じゃないっすよ」とか。それが初期反応だったりしますよね。
村尾 そうそう。でも一方では、その隣の人は、「ブランド=ロゴがあって印刷物がカッコイイこと」って思ってる人もいるから。
松岡 ああ、デザインやるんだ、CIやるんだと。
村尾 うん、CIやって格好良くするんだと。「そんな金使うんだったら俺のボーナス上げてくれよ」って人が隣にいるわけですよ。
松岡 「ボーナス減らしてなんだよムダな金使って」、と。
村尾 だから本当、「ブランドつくるぜ」って言ったら受け取り方が10人いたら10通りあるんで。
松岡 なるほど。
村尾 そこは「別に難しいことやるわけじゃないから」ってことをフォローしたり、下準備はしますね。

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